はじめに
ずっと、見たいと思っていた。
それ故にかなりハードルが上がっていたが、それも含めて感想として書いていこうと思う。
だから、この記事はよりもいの内容の感想というより、自分がこの作品をどう受け取ったかというやや自分本位なものになってしまうかもしれないことを先に述べておく。
したがって、ストーリーに関することや南極のことについてはそこまで触れないと思う。
感想
この作品の主軸は「ともだち」「実現」だと思った。
ともだち
主人公4人それぞれに注目して書いていこうと思う。
玉木マリ
キマリはもともと引っ込み思案で、行動を起こす前に必ず「もしうまくいかなかったらどうしよう」と考えてしまい、結局一歩が踏み出せない、そんなキャラだった。
キマリほど顕著でなくても、それが普通だと思うし、自分だってそうだ。
しかし、キマリは物語が進むにつれて大胆に、やりたいことを実行するようになっていく。
というより、描かれていなかっただけでもとからそういう節はあったのだろう。
幼馴染の高橋めぐみは近い距離にいたがゆえにそれを感じ取っていたようだった。
また、キマリは感情豊かで、ともだちが不安やかなしみを抱えているときに一緒に泣いてあげられる、というより泣いてしまう。
これは本当にすごいことだと思う。
共感してもらえるというのはとても気持ちがいいものだし、言葉にしづらいような感情の機微を判ってもらえるのは心が通じていると実感できる。
きっと、4人がここまで仲良くなれた最初のきっかけはキマリだと思う。
小淵沢報瀬
南極観測隊員の母が行方不明になってからずっと南極を目指してきた。
クラスメイトに馬鹿にされようと、先生に呆れられようと、決して折れずに多くのものご犠牲にしてお金をためてしつこく粘り続けた。
報瀬の母親が帰ってこないまま時が流れ、実感もわかずにいた自分を変えるために南極を目指していたのだ。
しかし、南極に到着して最初の一言目は「ざまあみろ!」だった。
それにしてもあのシーンはよかった。
皆も一緒に「ざまあみろ!」と叫ぶところは、大人も子供も、きっとあそこにいた人たちはそれまで耐え忍んできたのだろう。
「本当に南極にいけるのか?」「計画も遂行できないんじゃないのか?」という周囲の視線にぐっとこらえてきた、それをやっと発散させた瞬間だったのだろう。
それはともかく。
母親とのある意味では決別のために南極にきたが、いざ来てみると実感がわかない。
そのことに本人も動揺するが、わかる気がした。
(突然の自分語り)
自分も受験のときに努力をして、その結果うまくいったと分かった瞬間思っていたより全然うれしさや感動が来なかった。
決して余裕だったとかではなくむしろ奇跡みたいなものだったのだが、いったいなぜだったのだろう。
(自分語り終了)
ずっと掲げていた目標は達成したときに実感がわかないものなのだろうか。
閑話休題。
報瀬は元からなのか、南極に行くといい始めてからなのかはわからないが、とても気が強く、敵と判断した相手にはとことん強気になる。
そして、(本人は性格が悪いと言っているが)自分の大切なものや人をないがしろにされたり傷つけられると本気で怒ることができる。
これも、キマリの共感と同じようになかなかできることではない。
怒るというのはとても気力を使うし、そのあとの関係はこじれやすい。
しかし、怒ることは悪いことではないし、むしろ怒らなかったことを後悔したことも多々ある。
それこそ、自分のともだちや趣味、大事なものを馬鹿にされた時だ。
その時とっさにその相手に同調してしまったり、軽く流してしまうと、その場ではこじれなくとも自分の何か大事なものが揺らいでしまう。
そんな自分からすると、本気で真っ向から怒ることができる報瀬はとてもかっこよかった。
三宅日向
部活時代のトラブルで部活をやめ、その後も徹底的な噂流しによって学校にもいられなくなってしまった。
自分はとある事情から日向の過去を最初から何となく知ってしまっていたがゆえに、序盤の日向のセリフも刺さるものが多かった。
日向作の名言集も普通にいいものが多かった。
パスポートの時や、元部活メンバーとのときなどそうだったが、日向は3人に対して弱音を吐かず、「空気を読むのが苦手」と言いながら、一番みんなのことを思って立ち回っているように見えた。
悩みを話して共有するということはつまり自分のともだちにもその苦しみの一端を感じさせてしまうことになるし、気を使わせてしまう。だから黙っていよう。
この考えはみんな常に抱えているものだし、事実だとも思う。
ただ、日向の場合はそれを一緒に抱えてくれるともだちがいたということだ。
所謂「重たい話」をできる相手ってそうそう見つかるものではないし、とても貴重だと思う。
白石結月
芸能人で、母親のプロデュースの元で芸能活動を行い、最初は南極に行くのも嫌がっていた。
そりゃそうだ。
いくら仕事でもいきなり「南極行ってこい」とか言われたらそりゃ嫌だわ。
また、幼稚園の時から子役として働いていた結月はなかなか自由時間がなく、友達を作れたことがなかった。
そのため、ともだちがどういうものかもわからず(よくわかっている人なんていないが)、ともだちにずっとあこがれていた。
ともだちにあこがれていたがゆえに「どこからがともだち?」「何をしたらともだち?」ということが気になってしまい、空回りしてしまうこともしばしば。
そんな結月からのラインで「ね」と送った時のキマリの「ともだちって一文字なんだ!」には「たしかに」と納得してしまった。
お互いに尊重し合えるんだけど、ある程度雑に扱えるというか、気を使わないことができるというか。
ともだちはなるものじゃなくてなってるもので、なんの強制力もないためいつでも消えてしまう。
実際、ともだちとなら言えるけど「あいつとは親友だ!」なんて思えることなんてめったにないし、そもそも形のない関係に名前を付けて分類するのは難しい。
だからこそいいのかもしれない。
この4人がいろいろな壁を越えてイベントを経るごとに打ち解けて、お互いに踏み込んでいくさまがとてもよかった。
実現
この作品の大きなテーマとして「ともだち」ともうひとつ、「夢の実現」があると思う。
フィクションとして「きっと行けるんだろうな」と何となくわかりつつ見ているから南極に行けたことへの衝撃はそこまでなかったが、もし現実でクラスメイトが「南極にいく!」と言っていても(口には出さないにしても)「何いってるんだ?」とは思ってしまう気がする。「まあがんばってね。無理だと思うけど。」と。
でも、彼女たちはそれを作品の中ではあるが実現した。
「結局運がよかっただけじゃん!現実ではそううまくいかないよ。」と思うかもしれない。確かにそうだ。
しかし、まず一歩踏み出さなければそのわずかな運をつかむどころか、気づくことすらできない。
所詮は創作物だから、その中で南極に行けたからと言って自分が行けるとは思えないが、自分で無理だとあきらめていることはほぼすべてが南極に行くより簡単な気がするので、そっちならもしかしたらできるんじゃないかと思えてくる。
覆せないと思い込んでいたものって案外なんとかなるのかもしれない。
それがわかった次の悩みは、行動に移せるかどうかだ。
事実だけ考えれば何のことはない。やるだけなんだから。だけどそれが難しい。そして億劫だ。
自分の今いる環境を変えること、飛び出すことには多大な労力と覚悟が必要となる。
そして、うまくいかなかったときのリスクやもっともな理由を探し出して実行しないことを正当化する。
つまり、自分を含めた大半の人は1話のキマリと同じなのだ。
そして、年を重ねるごとにそもそも変えたいと思うことすらなくなっていく。
それはしがらみが増えて本当に実現が難しくなったというのもあるが、それ以上に「どうせ自分は実行しない」と理解してしまっているからだ。
思い浮かんで結局実行しなかった場合、自分に対してわずかに呆れや嫌悪感が生じる。
それが積み重なると自信がなくなっていく。
年を取るとそこまでわかってしまって、そもそも叶えるのが難しい願いを持たないように自制するようになるのだろう。無意識的に。
自分もそれが染み込みつつあり、無難な方へ、あたかも元からそれを望んでいたかのように進んでいる気がする。
そして、意識的にそのことから目をそらしている。
でも、仕方ないではないか。自分の人生一回きり。
いくらでもやり直せるという人はいるが、それは所詮他人の言葉であって自分の経験ではない。
もしこの選択をとって取り返しがつかなくなってしまったら?
例えば就職。
努力してやっと入った大学でそれからもずっと努力してきたのに、それをずっとやってみたいとおもっていたが、実は給料が低く、休みはほとんどなく、能力がないと食っていけず、専門性が高いため転職もしづらいことがわかってしまうと、思ってしまうわけだ。
「本当にそれに見合うほどお前はそれがやりたいのか?」と。
要はやりたいことと自分の生活を天秤にかけたときどっちに傾くかという話だが、これは人によって違うからこそいろんな人がいるんだろう。
とまあこんなことを最近はもはや考えてもいなかったが、考え直すきっかけになった。ちゃんと考えようとするとめっちゃ心重くなるけど。
ずっと創作に埋もれてだらけたいです。
まとめ
とても面白かったし、共感したり、考えさせられることも多かった。
そういえば「ともだち」もそうだけど「青春」も同じくらい形がないなあ。
果たして青春とはなんぞや。口にするとなんかむずむずしてくる。
ただ、一つ思ったのは前評判は耳に入れすぎない方がいいな。
聞けば聞くほどハードルが上がって「これは感動できるんだから感動しよう」という謎の意思が働き始める。
けど前評判ないと名作にはなかなか巡り合えないしなあ。
そこがまた難しい。
それはともかく、とてもいい作品だった!
最後まで読んでいただきありがとうございました!!!