ここ数年で、少しずつノベルゲームというものにも手を出している。
~ここまでのノベルゲー経験~
最初にやったのは「ドキドキ文芸部」。
知っている方はわかるとは思うが、初めてノベルゲームをする人が触れるものではなかったです。はい。
きっかけは「ギャルゲーをやってみたい」と友人に言ったところ「ストーリー重視だから絶対にネタバレは見るな」と忠告付きで紹介された。
とんでもない衝撃を与えていった作品だが、いつかこちらの感想も書きたい。
そのあとは、Chaos;Childに夏を費やし、ビフォーアライビングアットターミナル、真昼の暗黒(これらもそのうち書きたい)を経て今に至る。
あらすじ
送電塔が建つその離島には、人の念を喰らうコゴリ鬼という化け物が出るという。
役目を背負って島に来た少女ミメイは、そこで夜刀という一人の男と出会う。。。
ホームページ
このゲームは無料で配布されており、以下のサイトでダウンロードできる。
以下ネタバレあり
感想
製作が2007年と少し古めだが、イラストとBGMが作品の雰囲気にマッチしていて、気持ちよく読み進められた。
各章が登場人物一人ずつにフォーカスを当てており、短編集のように区切りがついているので寝る前などに少しずつプレイできたのがよかった。
プレイ中の感想
視界が暗くなった時に現れる赤い柄を最初は特に意味のないものかと思っていたが、ミメイが未来を見るために練り上げているものなのかな。
夜刀視点の時にもあるか確認しておこう。
←夜刀視点でもあったわ。予想はずれて残念。
夜刀の眼帯の裏にコゴリ退治の呪文かかれてるのBLEACHの剣八みたいだな。
3章 来し方行く末
亡くなった人の思いが形となって現れるコゴリ。
夜刀のおばあさんの昔の姿が現れたのは、戦いに明け暮れた狂女としてのおばあさんを過去に捨てて今を生きていたから。
そして、死期が近づいて在りし日のおのれのすがたに思いを馳せたからなのだろうか。
ミメイと夜刀にとってはこれは悲劇でしかないが、おばあさんにとっては一瞬でも輝かしい過去の自分を取り戻し、納得できる死に場所を見つけられたのではないだろうか。
4章 ふること語り
夜刀視点では病み上がりのミメイが原っぱで「傘を振り回している」と表現しているけど、ミメイ視点では「気合を入れて修練をしている」つもりなんだろうな。
視点が切り替わるものはこうやって同じ動作やものに対するとらえ方が違うのが面白い。
ん?遠くまで見通せる目をコゴリ鬼が得ていた?それって、、、
いや、遠くっていうのは時間じゃなくて空間的な意味っぽいな。
ありゃ、宣託をする鬼ってやっぱり未来を知る鬼らしい。
ミメイ。。。
送電塔はしめ縄の役割があったのか。
送電塔を使ってコゴリを日本全土に広めるって、とんでもないこと考えるなあ。
確かに宣託の恩恵は大きいけども、コゴリが全国にわくようになったらどうするつもりだったんだろう。
夜刀も未来を見えるとは、、、
ってことはあの模様の予想はあってたってことか。うれしい。
よかった文章
夏の厚い雲が、ゆっくりと空へのびていく。
送電塔の草原に風はなく、ぬるい空気が肌に触れてはゆるやかに流れていく。
あたりには目を楽しませるものは何もなく、ただ自分とミメイが建っているばかりだった。
それでも、今見えている景色には何の不足もないように思えていた。
こういう何気ない情景描写が多く、風景を想像しながら読み進めると肩の力が抜けていく気がする。BGMも相まって、リラックスに向いてると思った。
一緒に泣くのもいいけれど、それが過ぎたら自分の周りのひとには笑っていてもらいたい。
そのほうが、俺は良い。
最初は冷たい印象でった夜刀がミメイといるうちにだんだん柔らかくなっていく。
しかしそれはミメイが夜刀を変えたというよりかは、夜刀のそういう内面を引き出したのだろう。
ミメイ視点ではそっけない印象の夜刀が、心の中ではこういうことを考えて、自分の言い方が冷たいのではと気にしているのもほほえましい。
ああ、そっか、コゴリが両親、それから故郷に化けるということはそれらはすでにないということか。
ミメイは夜刀が小さいころにあった鬼?
でも、ミメイは少し前までは北の方にいたはず
そして、ミメイ自身には今までその自覚と記憶はなかった。
夜刀といることで眠っていた鬼が目覚めた?
または力の使いすぎか。
5章 凝り夢
夜刀を殺そうとした記憶はあるらしい。
そして、殺せなかったことを残念に思っている?
「夜刀を喰うことができれば、私はずっとここにいることができる」
故郷にいるころからミメイは鬼だったのだろうか。
光を見ることも人と会うこともできず、ただ未来を見続ける役目。
だんだんミメイが人として過ごしていた時の記憶が周りの人から抜け落ちてゆく。
それは、ミメイがコゴリに戻り始めているということだろうか。
そっか、ナギさんもハナちゃんもミメイの声を忘れてしまったのか。
「存在を忘れられる」。昔は孤独が当たり前だったからこそ、その恐怖にも耐えられるとミメイは考えたが、人とのつながりを得て、ぬくもりを知ってしまった今、それが失われていくことはどれだけ恐ろしいのか。
やっぱり、夜刀があったのはミメイだったのか。
夜刀が呪われ、結界の穴となったことで、夜刀の未来だけは見えなかったということか。
悲しむ夜刀に、せめて降りしきる雨から守ってあげたいと、その心から傘を持っていたんだな。
二人は親子に近いものだった。
もう真っ暗で何もないところには戻りたくない、まだ消えたくない、そのためには夜刀を喰わねばならない。
ああ、夜刀もミメイを忘れてしまったのか。。。
未だ明けやらぬ道を、ただひたすらに進みやれ。
終話 未明の道
湧き出るコゴリを二人で封じに行く。
さいごに
この作品の売りは、BGM,SEを含めた表現の柔らかさにあると思う。
そして、もっともそれが現れているのは、やはり文章だ。
考察や衝撃的なストーリーが売りのメインではないと思うので、ここで何を書こうか、となることが多かった。
音をブログで伝えることはできないので、せめて文章だけでもということで、ときどき気に入った表現などを書いたりしたが、どの場面で、何から感動を得るかは本当に人次第だと思う。
だから、ぜひとも実際にプレイしてほしい。
同人ゲームをするときには、「どこに着想を得て、何を描きたくてその作品を生み出したのか」を考えると面白い、と聞いたことがある。
このゲームはどうだろう。
青空の下に広がる草原に、ポツンと立っている送電塔。そして、和服姿の少女と軍服の青年。
この構図だろうか。
それとも、ゆるやかにながれていく時間、人と人の間に生まれる暖かさだろうか。
どれもあったのかもしれないし、もしかしたら全く別のものかもしれない。
それを確かめる術は今の自分にはないが、明確な答えがわからないままというのも、自分の好きなように考えられていいかもしれない。
筆者は数か月かけてゆっくりとプレイしていたが、なぜかというと、雰囲気がとても柔らかいので、一気にプレイするよりも少しずつの方がいいと感じたからだ。
後、寝る前にプレイするととても気持ちよく寝れる。
今晩の夢にでも草原にたたずむ送電塔、そしてその下で日向ぼっこをする二人の姿が出てきたらいいな、なんて考えてしまう。
作品にあてられてなんだかだいぶ恥ずかしいことを書きなぐってしまった気がしないでもないが、まあいいとしよう。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
よい夢を。